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「ポスト」 part2

  • 2009/11/15(日) 18:00:00

予想を上回る長さになってきております。

・まだ終わりません。続きます

・タイトルをpartXに変えました。

・相変わらずずらずら書いてあります。

・今回は多分普通な切れ方です。



追記より本編。どうぞごゆっくり






















九月三日、バイクに乗る。またややあって……あの家に来た。寧ろ「戻ってきた」ような感覚になる。これからもずっとこの家に新聞を挟み続けるのではないかと思い、一喜一憂するなんて馬鹿馬鹿しいと思った。人の家なのに。この奇妙な思いに呆れつつ、ドアノブへ挟もうとする。
 しかし、その前にドアノブが回った。こちら側へ勢いよく開いて、驚いた僕の額に衝突し、思わず声を漏らした。中からも息を呑む音がした。僕は額に新聞を持った手を以って行きつつ上半身を起こした。ドアは開かれ、50代中ほどと見える慌てた表情の女性が現れた。パジャマにガウンを羽織っている様だ。吃驚して頭の回らない僕に向けて、「ごめんなさい!」と言う。腕が引かれる。
 「どこに当たりました?手当てしないと。本当にごめんなさい」と言い、バイクから降りてほしそうに軽く手を引っ張ってくる。「いえ大丈夫です。…それに仕事中ですし。あ、新聞です」と言い断ったら腕を離してくれた。新聞を受け取りつつまだ心配そうに僕を見ている。新聞で隠れていたおでこに気づき、「あら……まぁ確かに血は出てないみたいね。でもちゃんと冷やしてね?」。「はい、……すみませんでした!」と言ってその場を離れようとしたが、(何となく申し訳なくて早く離れたほうが思った)、不意な言葉が僕を射た。
 「あ、待ってちょうだい。あなたに会いたくて急いで起きて来たのよ……いつも新聞配達してくれてるんでしょう?」僕は振り返った。「一度お礼したくて。その前に謝ることになっちゃったけど。」またおでこに視線が来る。おばさんは口を閉じている。僕の反応を待っているのだろう。
 いくつか質問が飛び出そうとしてくる。一番朝に近いところに来たのは「え、あなたが新聞を受け取ってたんじゃないですよね?」だった。ここで、時間を与えられたことにより改めて気づいた。お爺さんでは無かったのだ。自分の中での勝手な空想は、現実のものではなかった。それは、彼女の顔をぼーっと見るに値する事実であった。「お爺さんも住んでいるんですよね?」というその質問はもはや意味を成さないように思われ、口から出る前に、凝り固まった表情によって押しのけられた。―――ややあって、「どうしてお礼なんて……。」と聞いた。
 おばさんは躊躇うことなく、僕の目を見て言う。「この家、ポストが無いでしょ?いつもきっちり丁寧に挟んでくれてるじゃない。長年の技なのかしら、凄く取り易いのよ。まるで住んでたみたいに。わざわざご苦労様です」照れる。自分がやっていたことは何だか既に当然のことだったし、改めて人に指摘されて感謝されるなんて恥ずかしかった。そしてもっと恥ずかしいのは、勝手な空想だった。感謝されて気付く、自分がそれを望んでいないことに。僕の思い描いたシナリオとは違う。やがて恥ずかしさは逃げ出しい気持ちになった。自分の空想も、それを対象とする行動も、全て水泡に帰したように感じてきたのだった。
 僕はハンドルを握り締め、跨り、ハンドルを捻った。おばさんは驚いて声が出ないようだったが、「ちょっと待ってよ!」と足音が小さく聞こえた。一気に通りを駆け抜ける。坂を上り、大通りに出る。信号は赤だった。後悔が追いついてきて、止まっている僕を一斉に責めた。
 配達をかなり飛ばして来てしまった。戻らなければならない。戻れば彼女はいるのだろうか……恐らくいないだろう。音がしても出てこないだろう。きっと訳が解らない筈だ。どうして行ってしまったか解らない自分を責めているかもしれない。そうしたのは自分だ。勝手な空想を持っていた自分だ。
 やっと信号は青になった。後悔はくっ付いたままだ。すぐに左折して元の道へ向かう。下り坂。何も考えずに自然と進んでいく。左折。突き当たりにあの家が見えるようになる。誰も居ない。速度を落としていき、左右を見回す。通りにはやはり誰もいない。安堵と緊張は拮抗していて滅茶苦茶。自分はその両方に打ちのめされ喘いでいる。とにかく仕事に集中しなければならない、するべきだ。突き当たりを左折して、配達を始める。
 あの家との距離が30メートルほどになった時、突然声が響く。「明日もお願いね!」
 反射的にブレーキを掛ける。が、すぐにやめる。今は振り返りたくない。配達を続けた。

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