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「ポスト」 part1

  • 2009/11/11(水) 12:00:00

公開です。


・ブログ用に書いた訳ではなかったので物凄く読み辛いです。ご覚悟の上で。

・更に元々分けないで公開する予定だったので変なトコロで切れてますが
 あまり気にしないで下さい……。


追記で本編スタートです。ごゆっくり

































 僕は、新聞配達のアルバイトをしている。大学に進学してから学費を稼ぐために始め、もう1年半になる。それなりの年月と言えるかと思う。仕事にもとっくに慣れて、登校までにも大分余裕ができるようになった。
 言うまでも無く、初めは苦労した。バイクの免許を取ったのは去年の夏なので、(因みにこのアルバイトの為に取得したのだが)、それまでは自転車で配達していた。春であっても、大量の新聞をカゴに抱えての発進と停止を繰り返しに汗だくになった。更に最初の数日は道に迷い、せまる登校時刻に焦り、また別の汗を流していた。
 しかし、その迷子よりも困ったことが初日に起こった。ポストが無い家に遭遇したのである。それはこじんまりとした平屋の洋風の家。漆喰の白い壁に木材部分は緑。見えるうちではドアとその隣にある小窓の枠、屋根が緑である。漆喰は灰色になっている所もあり、緑のペンキも剥げていたりする。ポストが無いなら表札もなく、塀も無い。まだ辺りは薄暗いが、ここだけもっと暗く感じる。なんとなく、あまり長く関わってはいけないと感じた。そしてまたなんとなく、ご老人が一人でのんびり暮らしている、そう思った。
 さて、ポストの無い家に対して配達員はどうするべきか。勿論契約して頂いているので、配らないなどあり得ない。かといってドア、窓などに置けそうな面もない。焦りつつもどうにもできず、時間は過ぎていき握っていた新聞はふやけかけていた。とうとう、自分に仕方ないと言い聞かせてドアの前に置いた。葛藤は15分続いていた。
 その翌日、またしても道に迷いつつ、例の家に辿り着いた。初日よりもここに居たくないという思いは増してしまったいた。置いておいた新聞は回収してくれていたようなので少し安心した。しかし、前日とは少し違った。ドアノブに貼り紙がしてあり、「ここに挟んでおいてください、お世話様です。」と書かれいたのだ。達筆で、優しい字だった。そのドアノブは特殊で、鍵型をしており、閉じた状態で下を向いているのだった。確かに挟まる。僕はすぐさまこの指示に飛びつき、新聞を挟み込んだ。そして、近寄りたくないと思っていたことを少し後悔しつつ、自転車に乗った。
 授業中、じっくり考えていた。寧ろ、考えずにはいられなかった。今日、つまり(僕にとっての)二日目に紙を貼ってくれていた。新たな新聞配達員、つまり僕へのものであることは間違いないだろう。何故なら今までも購読していて、前の配達員にもそうしてもらっていただろうから。改めて、昨日の置き方は失礼だったと思った。そしてあの優しい筆跡に、怒られることはないと安心した。一人暮らしの老人説は、僕の頭の中でほぼ確実になっていた。
 三日目、もう貼り紙は無かった。思ったとおりだったので、直ぐにドアノブに新聞を挟んだ。まだ薄暗い家ではあったが、柔らかい、住み易そうな家に思われてきた。道に迷わずに配達が終わった。
 それから一度も、もう貼り紙がされることは無かった。それでも、僕にとっては特別な存在だった。毎日、新聞を挟んだ。やがて、新聞の角度とか、折り目の向きとか、どのくらい挟むかなど、出来るだけ気を遣うようになった。勿論誰にでもできるような簡単なことなのだが、ここに住むお爺さん(仮定)が取り易いよう、努めた。
 春が過ぎ、夏になった。このバイトをずっとしていたいと思っていた。勿論、第一の理由は例の家だ。相変わらず反応は無いが、毎日楽しみだった。焦れったくもあり、満足してもいた。お爺さんと会ってみたくなっていた。が、会ってはいけない予感もあった。長期暇になったので、免許を取ることにした。八月中に免許を取れたのだが、切りよく九月からバイク配達へ切り替えることにした。こうして人は楽するのか、とか思いつつ毎日乗り回していた。
 九月一日早朝、バイクに乗る。風が心地良い。発進と停止を繰り返しながら配達を進める。いつもの風景が変わったように感じる。なんとなく力が入ってしまい、危なっかしくなることがある。でも慣れた道を進む。また一部消化する。どんどんあの家へ近づく。角を曲がり、いつものあの壁が視界に入る。近づいていく。一つ手前の家のポストへ新聞を入れる。そしてあの家のポスト―――つまりドアノブの隙間に挟む。任務完了、ではないのだが、緊張は一気に解けた。少し停まったまま家を見つめる。どことなくいつもとは違うように、また更に明るい家に見える。一呼吸置いて、また次のポストへ向かった。
 九月二日、バイクに乗る。緊張は無く、すれ違い様に散歩中の犬に吼えられつつ、ジグザグ進む。ややあってまたあの家に着く。今度は挟む前に少し眺める。そして丁寧に挟み込む。次の家へ向かうべく、直ぐにアクセルを入れた。今思えば、角にある家に配達している、この時に振り返っていればよかった。

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